kara1216_mathのなつやすみのにっき

私のなつやすみのにっきです。主に数学の話(読んだ数学書の進捗報告)をします(時々アニメと陸上の話もする)

藤崎『体とGalois理論2』のどくしょかんそーぶん。

最近日記の更新をサボりまくって何もしていなかったので、なんか書くかって気分になったので夏休み(と2Q)で読んでた藤崎『体とGalois理論2』の読書感想文を書こうと思います。
これは分冊版(計3冊。現在は1冊にまとまっている)の2巻目で、主に体の有限次拡大のGalois理論に関する内容を取り扱っています。
細かい話は1巻の時にしたので、主に2巻目の類書との違いを話します。
例の詳しさ、載っている主張の豊富さなどはまあ分厚いのでそれはそうなんですけど、特に顕著な点は、Abel-p拡大に関してWitt vectorの環の定義から非常に丁寧かつ端的にまとまって書かれていることです。和書だと僕の知っている限りだと雪江3冊目(黄色雪江)の補足の章に少し扱われていますが藤崎ではより丁寧かつ様々な内容が書かれています。またKummer理論も同様に非常によく書かれていて、self-containedかつ非常に面白い話題が載っています。
元々私が藤崎読むかってなった目的の1つがこの辺りの話題について、詳しく知りたいってモチベだったので個人的には非常に満足しています。
簡単にAbel-p拡大の理論をまとめると、正標数pの体Fの有限次Abel-p拡大は、Fと素数pに対して定まるWitt環と呼ばれる対象(これは離散付値環になる。例えば有限体Fpに対しては、p進整数環が定まる)の情報のみで完全に記述されます。
(正確に言うとあるmを固定したとき、Galois群の指数がp^mの約数となる有限次Abel-p拡大が、長さmのWitt環を加法群と見たときの部分群と一対一に対応する。具体的な対応関係はKummerの理論などと類似の関係です。)
個人的にはこの主張はとても非自明かつ綺麗に感じました。Kummerの理論もそうですが、ある種の条件を満たす体Fの拡大体がFに内在的な情報のみで決定されてしまうのは不思議な気分になります。
現在、3巻を軽く読み始めているのですが少しパラパラと全体を見てみたところ、付値論のところで考えている体が完全体だと、Witt環が完備離散付値環になるという主張を見ました。この辺りの話も今から楽しみだなぁーって思います。
まあ付値論は第6章で、まだちゃんと読み始めたのは4章頭なので先は長いけど。
他にも様々な面白い話(Z/pZの代数的閉包の特徴づけ、様々なGalois群の具体的な計算など)が載っていて、2巻目も飽きることなく読めました。
とても良い本なのでぜひ読んでみてください。